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2011年05月18日 (水)

政府の損害賠償スキームについて

東京電力の損害賠償を政府がサポートする仕組みが、大枠で決定されました。まだ細部ははっきりしていませんが、私の考え方を示しておきたいと思います。

まず、いわゆる「機構」に国と原発を運営している9電力会社(東電を含む)が負担金を拠出し、この機構が東電の損害賠償を支援するという仕組みについてです。これから起こるかも知れない原子力災害について東電を含む9電力会社が共同出資した機構を作り、そこで一種の共済保険事業を行うことは理解できます。もし機構に参加したくない電力会社があれば、原子力発電をやめれば良いのです。ところが、この機構が既に発生した福島第一での事故に対する損害賠償で東電を支援するとなると、全く話が変わってきます。3月11日時点で原発事故に関して連帯責任を定めた法律はなく、東電以外の電力会社は今回の事故には全く関係ないからです。仮に機構を設立するのであれば、機構の中に複数の勘定を設け、今回の事故部分と将来の事故部分を分けて管理し、今回の事故の賠償には他電力会社の負担金は一切使わないようにするべきです。

次に5月13日午前中の枝野官房長官の記者会見での発言です。枝野長官は震災前の融資が債権放棄されない場合、公的資金投入についての国民の理解が得られるかと問われ、「到底得られないと思う」と述べ、さらに、債権放棄が実現しなければ公的資金を投入しないという可能性にも言及しました。優先順位については会社法に明記されており、そうしたルールを全く無視する長官の唐突な発言で、市場には激震が走りました。株主を保護する一方で、債権者には負担を要請するかも知れず、しかもそれだけではなく、3月11日以前に東電に資金供与をした金融機関と事故の発生後に資金供与をした金融機関では別の扱いをするとも発言したのです。民間金融機関に資金提供を求める、あるいは債権放棄を求めるというのは、菅政権お得意の「お願い」でやって良いことではありません。法治国家は法律にのっとって運営されなければならず、その法律を作るのが立法府としての国会であり、執行するのが行政府としての政府・内閣の仕事です。その政府の要職である官房長官が法律の枠組をまったく無視した発言をすることは大きな問題です。

東京電力の負債には、円建てと外貨建ての一般担保付き債券(電力債)や金融機関からの融資などがあります。これらには全て明確な弁済順序が定められていますが、枝野官房長官はそれを「国民の理解を得る」ためだという「お願い」で滅茶苦茶にしようとしています。内閣は「すべてのステークホルダー」に協力をお願いするばかりで、弁済順位の議論を避けているのです。その中で銀行だけにはなし崩し的に責任をとらせようとしています。これでは市場はたまったものではありません。リスクが顕在化した後の3月末にメガバンクが行った1.9兆円の無担保融資を特別扱いしようという枝野発言などは、何らかの密約の存在すら想起させます。ルールがあって初めてそこに参加者が集まり、取引が行われ、企業活動を支える資本市場が成立します。そのルールを国が自ら蔑ろにするのは、国が日本の資本市場を貶める行為に他なりません。法律の規定する通りの弁済順位をあらためて確認したうえで、議論を進めなければなりません。

株主責任の議論の中で減資を求める人がいますが、減資をしても国民負担が減ることはないので、私は減資などせずに1円で東京電力が大量に株式を発行してそれを国が全額引き受ければ良いと思います。東電の賠償責任には上限が設けられないことになっていますから、汚水処理や廃炉費用なども含めると現時点で東電は実質的に債務超過でしょう。東電は市場における公募増資で債務超過解消に必要な額の調達ができないと判断したから政府に支援を求めている筈です。それならば、1円増資を国が引き受けて既存の株主の権利を大幅に希薄化すれば、資本市場のルールに則って粛々と国が経営介入できることになります。法治国家であれば粛々と法律を適用して国が株主となり、経営をコントロールすればよいのです。法的整理ということになれば、損害賠償請求権が一般債権として他の債権と同様にカットされる可能性がありますが、被害者救済は国が別途手当てしてしっかり補償を行うべきです。

国民負担を減らす為には債権の額を減らす必要がありますが、電力債投資家や銀行など外部債権者の権利は法律に則って処置すべきです。ある程度恣意的に処理できるのは東電の年金債務でしょう。銀行に対する公的資金導入時には年金には全く手を着けませんでしたが、JALのケース以降は年金債務も債務リストラの中に含める考え方が生まれています。東電でも現役OB併せて5万人弱が年金受給権者と言われていますが、年金債務の扱いが今後の大きな争点になってくるでしょう。

さて、機構を通じて9電力会社が損害賠償を長期にわたって負担するというのは、これらの会社が常に利益を出し続けることを前提としています。これは地域独占、発送電一体という現在の電力供給体制を固定化していくことに繋がりかねません。電力事業の自由化を進めていく中で、発送電を分離して送電網を開放する事により新規事業者の参入を促したり、地域独占を排する事で競争を促したりといった施策が考えられます。再生可能エネルギーや電力ネットワークを使った新しいサービスなどの導入にはこういった自由化が決定的に重要です。ところが、既存の電力会社が利益を出し続けられる事が被災者への損害賠償における前提条件とされてしまうと、電力会社の経営を脅かすような自由化が一切進まなくなります。電力事業の将来を考えると、今回の事故に関する賠償責任はあくまでも国と東電にあると明確にする必要があると思います。

最後に、政府案だと東京電力は今後賠償を行うためにのみ事業を続けることになります。東電は首都圏の社会経済インフラを担う重要な会社ですが、恐らく日本一暗く活気のない会社になるでしょう。経営向上のモチベーションもなくなるでしょうし、事故率の上昇やービス品質の低下なども予想されます。利益が全て賠償金支払いに使われるとなると、株式市場にとっても全く存在意義の無い会社になります。それで良いのでしょうか。現政権には企業経験者がほとんどおらず、会社の活力がどれだけ重要か全く分かっていません。原子力事業を国の直轄にする、あるいは発送電の分離などを行う過程で賠償責任とともに東電から切り離すべきものを切り離し、けじめを付けた上で、残った東電を新しく育てていくことを考えるべきでしょう。勿論現経営陣やこれまでの企業文化は変えていく必要がありますが、優秀な人材も多くいる東京電力は、新しい会社として再起をはかれるようにしていくべきだと思います。

民主党政権は法律の守護者、執行者としての立場を放棄して、場当たり的な言動を繰り返しています。法治国家としての日本の信頼を維持する為、これからもしっかりと監視をし、厳しく問題点を追求していくと同時に、今後の電力事業のあり方についても積極的に策定していきます。

 

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