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2010年05月01日 (土)

日本郵政とDBJ

政府は昨日(4月30日)郵政民営化を抜本的に見直す「郵政改革法案」を閣議決定しました。3月31日付けの本稿でも述べました通り、私はこの法案にはまったくもって「反対」です。

4月26日付けの日経新聞「経済教室」において、早稲田大学の大村教授が郵貯拡大案に関する問題点を綺麗に整理されていました。まずはこちらを紹介させていただきます。

大村教授は「成熟経済では、資源配分は市場メカニズムに任せることで効率的になる」という前提から始め、「財政投融資の為の集金マシンであった郵便貯金と簡易保険は、すでにその使命を終えている」と断言されています。そして、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額倍増の目的は郵政事業全体のパッケージとしての黒字化と国債安定消化という「特命」であり、運用体制がそれについて行けるかという懸念と政府からの暗黙の保証による民間銀行に対する圧倒的な優位性に懸念を示していらっしゃいます。全て、私の同意するところです。

大村教授の論点の中で、私は運用体制に関して特に以前から懸念を抱いてきました。これは金融の実務を長年経験してきた故に覚える懸念です。一言で言うと収益追求とリスク管理のバランスの問題です。世の中には数多くの機関投資家が存在しますが、どこでもプロのファンドマネージャーが一生懸命にリスクを管理しながら収益を追求しています。そして、必ずしもいつもうまくいくとは限らないのです。郵貯、簡保では、国債中心の運用から、地方債、社債、外債、シンジケート・ローン、投資信託などの利用、さらにはデリバティブの利用もやろうとしています。そして今後国内の公共事業や海外のインフラ整備プロジェクトへ10兆円もの巨額の資金を振り向けようとする案まで報道されています。

郵貯、簡保にこの様な運用が本当にできるのでしょうか。運用体制、リスク管理体制は極めて簡素です。脆弱といってもよいでしょう。外部委託をするにしても誰に委託すべきかの判別能力が求められます。ただでさえ過剰と思える金利リスクの管理すら満足に行われていないのが実状です。そもそも運用体制が整備されていない中であれだけ巨額の資金の運用は国債市場でしかできないという現状があります。資金が大きすぎるのです。金利が上昇しだしたときに市場が吸収しきれずに国債を売るに売れなくなることも目に見えています。運用体制、リスク管理体制を整備することが先決です。しかしながら、外部から人を採用するにしても、民営化から逆行し、政府が箸の上げ下ろしまでを決める郵貯、簡保に民間の運用のプロで魅力を感じる人はいないでしょう。運用体制ができないのであればサイズを小さくすべきです。郵貯拡大案は資金運用の面からも間違っているのです。政府案では郵貯、簡保が郵便事業の損失を補填することになっていますから、損失を出すことがあってはならず、しかも収益を一般金融機関以上にあげることが求められています。絵に描いた餅になるのではないでしょうか。実際に運用で損失が出た際のリスク負担も明確ではありません。本来、郵貯、簡保のお金は貯金をした人、保険に加入した人のものです。政府が勝手に使っていい代物ではないはずです。

郵政との比較で興味深いのは、日本政策投資銀行(DBJ)の経験です。DBJは日本開発銀行として昭和26年に設立され、平成11年に日本政策投資銀行に改編されました。その後の公的金融機関民営化の流れの中2008年10月に株式会社化(政府100%出資)され、概ね5~7年後に完全民営化(民間100%出資)することを目指しています。郵貯、簡保が預金者や保険契約者からの資金を集めて国の財政投融資に資金を回す資金の入り口だとすると、DBJは財投資金を用いて企業に長期貸し付けなどを行う資金の出口だという点でペアのような存在で、民営化への流れも似ています。このDBJにも今後民営化の逆行が起こってきそうな雲行きですが、このことはまた機会があれば述べさせていただきます。今回はこの数年の民営化の流れの中でのDBJの運用についてです。

DBJは基幹産業やインフラ産業への長期貸し付けなどの政策金融を長く行ってきましたが、日本政策銀行に再編されて以来は民営化の流れの中で積極的に新しい金融技術の導入や外部の人材を取り入れたりしてきました。クレジット・デリバティブではCDS、CDOと呼ばれる商品などを積極的に利用し、投資信託(ファンド)も利用してきています。郵貯簡保との比較で言うと、DBJは公共政策金融機関とはいえ金融を志す人々が就職してきた銀行であり、郵政省(現総務省)に国家公務員として就職してきた人々が主流の郵貯簡保とは根本的に遺伝子が異なります。2008年1月の説明会資料では、それまでに培ってきた産業調査や審査力のノウハウや金融技術応用力を生かし、十分なリスク管理・モニタリングを行いながら収益性を向上させるべく、ノンリコースローン等の仕組み金融に対して積極的に取り組んでいくことをうたっています。10年ほど前から伝統的な貸し付けだけではなく新しい産業金融の道を模索し、勉強、研鑽を続けてきた、その実績を踏まえての宣言だったと思います。

しかしその結果は、民営化直前から直後の18ヶ月(*)で、ファンド関連で111億円の損失、クレジットデリバティブ関連で96億円の損失と、合わせて約200億円の損失でした。金融市場でリスクを取っている以上悪い結果が出てくることも当然ありますし、今回の金融危機では世界中の名だたる金融機関のほとんどが損失を計上していますから、決してDBJだけが失敗したということではありません。しかしながら、これまで利益というものを追求したことのない政府系金融機関がファンドやデリバティブを用いた投資を行った時にどういう結果が起こり得るのか、一つの可能性として覚えておく必要があります。金融事業で収益を上げるのは郵貯簡保に与党政治家が期待するほど簡単で安全なことではないのです。

(*)2008年9月期(6ヶ月)にファンドを通した投資業務で53億円の利益、クレジットデリバティブ関連で140億円の損失。2009年3月期(6ヶ月)にファンド関連だ127億円の損失、クレジットデリバティブ関連で22億円の損失。2009年9月期(6ヶ月)にファンド関連で更に37億円の損失、クレジットデリバティブ関連では66億円の利益。

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